バレンタイン特別企画

賢者マサールの事件簿`ファイル3´

“甘い罠”





「シュトランというお菓子を知っていますか?」



朝からいやというほど同じ質問を繰り返している。

どこかの国の菓子パンの名前をもじったかのようなこのお菓子。

製造場所・製造方法・その材料にいたるまで一切の情報はない。

そんなものを探しているのは私が甘い物好きだからというわけではない。

ただ単に仕事だからだ。








数日前、依頼がきた。

概容はこうだ。

〝どうしても探して欲しいお菓子がある。

               名を「シュトラン」という。〟




名前からシュトラセラトが関係しているのではないかと思い、

即刻赴いてみたのだが有力な情報は1つとして入手できていなかった。

そして、今にいたる。







昼、そこらへんの店で昼食を済ましそれからまた聞き込んだ。

聞く人聞く人返ってくる答えは同じ。

それらしい店もいくつかはまわったが発見できなかった。

そうこうして日暮れ前になった。

もうお手上げ状態であった私は夕日をただぼんやり見つめていた。

そうすると街の外から何かが飛んでくるのが見えた。

私はアレを知っている、鳩だ。

鳩と一概に言っても、いわゆる伝書鳩というものである。

そして、そのあて先は間違いなく私であろう。

(余談だがこの鳩には、いつ・どこにいても私の魔力を探知して追ってくるようにしてある。)

わざわざ急ぎ足で来てくれた鳩をねぎらいつつ、私は手紙に目をやった。




差出人は古都警備隊からであった。

どうやら私の依頼事務所の目の前の屋敷に押し入った者がいたようだ。

犯人は捕まったようだがその身元が割れないようで、急いで私にも確認をということらしい。

わざわざご丁寧に写真まで同封されている。

そして彼らには喜ばしいことなのだろうが、私はこの人物を知っている。

数日前に私を訪ねてきた依頼者で間違いないだろう。

なるほど、ようやく話が見えた。

いくら探してもシュトランが見つからないわけだ。







おそらくこの強盗は突発的なものではなく、計画されていたものだろう。

そして計画も完成にかかろうとしていたある日、屋敷の目の前の建物について犯人は知ったのだろう。

自分の計画の障害になりうる建物、否、人物がいるのだということを。

しかし、その対処は驚くべきほど簡潔なもので済まされる。

〝偽の依頼〟

おそらくシュトランというものはこの世に存在しないのだろう。

依頼によって街を離れさせさへすればいいのだ。

唯一このお菓子についての手がかりであった名前、これ以外に探す余地はない。

そして私はまんまとその罠にかかったというわけだ。








無駄足を踏んだであろうことを落胆した私に声をかける人物がいた。

「もしかして、その鳩は兄ちゃんの鳩かい?」

どうやら見たところによると商人のようだ。

私は力なくうなづいた。

「そうかい、実はこの職業ともあろうもんが恥ずかしながら道に迷ってしまってな。

 森の中どっちに進んでいいやら分からなくなっていたんだ。

 でも、その鳩が飛んでいるのを見つけて追ってきたんだ。
 
 伝書鳩の向かう先に人ありってな。」

そういい商人は笑い声を上げた。

「その鳩が兄ちゃんのってんなら、なにかお礼がしたいとこだな・・・

 

 そうだ、いいものがあるんだ。

 ほら、これを兄ちゃんにやろう。

 俺も貰ったもんだからよく知らねぇがいいもんらしい。」



 




時として真実とは思いもよらないものだったりする。









「シュトランというお菓子を知っていますか?」



朝からいやというほど同じ質問を繰り返している。

どこかの国の菓子パンの名前をもじったかのようなこのお菓子。

製造方法・製造場所・その材料にいたるまで一切の情報はない。

そんなものを探しているのは仕事だからというわけではない。

ただ単に私が甘い物好きだからだ。
                                 “甘い罠”完
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